学生クリーン・ビーチいしかわ大作戦2017 稚魚放流&講義編

                             石川県水産総合センター内水面水産センター
                             所長 大内 善光さん
1 河北潟について
干拓前の河北潟は、周囲が35.5km、面積が23㎢で石川県最大の湖沼であり、満潮時には大野川から海水が流れこみ、海洋性のアマモも見られる汽水湖でした。
また、干拓前の河北潟には、キンブナ、ギンブナ、コイ、ワカサギといった淡水魚やスズキ、クロダイ、イシダイ、サヨリといった沿岸の魚も獲られていました。
なお、干拓事業は、地元の要望を受けて、昭和38年から農林水産省の国営事業として行われ、昭和60年に完成しました。
現在の河北潟は、面積が4.2㎢の淡水湖で、ギンブナ、コイ、ボラといった淡水魚が生息しています。

2 コイについて
皆さんは、コイと言えば「鯉のぼり」を連想される方が多いと思いますが、これは滝を登り切った鯉は龍になるという中国の言い伝え(「登龍門」)にあやかり、日本では、江戸時代に武士の家で子どもの立身出世を願って端午の節句に鯉を画いたのぼりを飾ったのが始まりと言われています。
しかし、小型のコイがまれに2メートルほどジャンプすることはありますが、普通の大きさのコイがジャンプして滝を登ることはありません。

また、コイは漢字では魚へんに里(鯉)と書かれるように、流れが緩やかな川や池、沼などの里山にいる魚です。
 産卵期は春で、卵は水草などに付着(付着性)し、数日のうちにふ化します。
さらに、コイは非常に丈夫で長生きする魚です。このため、水から上げてしばらくの間なら水のないところに置いても大丈夫です。また、寿命も平均20年以上、まれに、70年を超すものもいます。
なお、コイは餌をくれる人を識別しますので餌の時間に集まりますが、冬には消化器官の動きが鈍くなるので、餌は食べません。

3 ニシキゴイについて
 コイと言えばもう一つ、観賞用のニシキゴイがあります。
 皆さんは、日本の国の花や国の鳥、国の魚をご存じでしょうか。国花は桜と菊、国鳥はキジ、国魚は錦鯉です。ちなみに、国石は水晶です。

日本の錦鯉の養殖は、江戸時代の中頃に新潟県の山古志・小千谷地方で始まりました。
もともと山古志・小千谷地方では、冬期の非常食用として休耕田でコイを養殖する習慣があり、養殖する中で突然変異を起こした色つきのコイが錦鯉の始まりです。

錦鯉が脚光を浴びたのは、大正13年に開催された東京博覧会に越後鯉20数尾が出品された時でした。
なお、錦鯉の中では、白い地肌に赤い模様の「紅白」、白い地肌に赤と黒の模様の「大正三色」、黒い地肌に赤と白の模様の「昭和三色」が有名です。

 新潟県についで生産量の多いのは広島県ですが、広島県のニシキゴイは、「空飛ぶニシキゴイ」といわれ、その大半が輸出品で、そのうち7割が東南アジア向けです。現在では、アメリカやヨーロッパにも輸出されています。
なお、広島城は太田川の下流(河口デルタ)にあり、この一帯は「己斐浦(鯉浦)」と呼ばれていたことから「鯉城」と呼ばれていたということで、現在も太田川は鯉の産地です。

4 食材としてのコイについて
食材としての鯉は福島県からの出荷量が多く、鯉こく(味噌で煮込んだ汁)、うま煮(切り身を砂糖醤油で煮付けたもの)、甘露煮にして食べられています。
また、洗いにして酢味噌や山椒醤油を付けて食べられることもあります。
調理前には、きれいな水で数日おいて泥の臭いを抜いて、さばく時は濡れた布巾で目を塞ぐとおとなしくなります。
なお、泥臭さは、ゲオスミンという成分のせいであり、ゲオスミンは酸性分で分解
するので、酢や酸性の調味料を使えば泥臭さを抑えることができます。

中国や東欧でも鯉を食べる習慣があり、中国料理では、鯉を丸ごと唐揚げにして甘酢あんかけにした料理があり、東欧系のユダヤ教徒は、安息日に鯉を料理して食べるそうです。

なお、日本では古くから女性の体力作りのために鯉を食したという伝承があり、妊婦が酸っぱい鯉を食べて健康となり、無事、安産できたという話や産後に鯉を食べると母乳がよく出るという話などがあります(内陸地に多い)。
 
また、コイの胆嚢(苦玉)は、解体時にこれをつぶすと身に苦みが回りますが、こ
の苦玉は、視力低下やかすみ目に効果があるということから鯉胆(りたん)という生
薬名で錠剤にされたものが販売されています。

5 その他
 水産総合センター内水面水産センターでは、全国的に行われているアユやマス類の調査研究に加えて、ヤマメ、カジカ、マゴイ等の種苗生産や漁協が行う放流事業への協力、ドジョウの種苗生産や養殖技術指導など、他県にはない特色のある研究、生産事業を行っています。
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